全国の市町村が把握している「通いの場」は、令和5年度で15万7,638か所ありました。参加者は241万8,838人、65歳以上人口に対する参加率は6.7%です(厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果」)。
15人に1人。
介護予防というと、運動と食事の話ばかりになりがちです。この記事では制度の側から見ていきます。どこに何があって、誰が使えて、どう申し込むのか。体の動かし方や栄養の考え方は別の記事で扱います。
総合事業は「なる前」だけの制度ではない
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)は、要支援1・2の方と、基本チェックリストで「事業対象者」と認められた方が使う仕組みです。同じ厚生労働省調査によれば、従前相当の訪問型サービスを実施しているのは1,593市町村(91.5%)、通所型サービスは1,582市町村(90.9%)。短期集中で機能改善を狙う通所型サービスCを実施している市町村も741(42.6%)あります。令和6年3月の1か月間の利用者は、訪問型41万3,478人、通所型75万664人でした。
名前が地味なので見落とされますが、これは予防だけの制度ではありません。すでに支援が必要な人の状態を保ち、悪化を遅らせるところまでが対象です。
入口は要介護認定だけではない
事業対象者になるもう一つの入口が、基本チェックリストです。25項目の質問に答えるだけで、要介護認定を受けなくてもサービス利用につなげられます。公益財団法人長寿科学振興財団の解説によれば、判定は領域ごとに分かれています。
- 6〜10の5項目のうち3項目以上に該当(運動器の機能低下)
- 11・12の2項目すべてに該当(低栄養。BMI18.5未満が条件のひとつ)
- 13〜15の3項目のうち2項目以上に該当(口腔機能の低下)
- 16に該当(閉じこもり)
- 18〜20の3項目のうち1項目以上に該当(認知機能の低下)
- 21〜25の5項目のうち2項目以上に該当(うつの可能性)
- 1〜20の20項目のうち10項目以上に該当(複数の領域に支障)
質問は「バスや電車で、一人で外出していますか」「この1年間に転んだことがありますか」といった平易なものです。答えるのに数分もかかりません。地域包括支援センターの窓口で受けられます。
通いの場の実像を数字で見る
主な活動内容は体操(運動)が8万6,072か所で54.6%と最も多く、趣味活動19.8%、茶話会13.1%と続きます。運営主体は住民団体70.4%、住民個人17.4%で、住民が主体のものが約9割。活動場所は公民館・自治会館・集会所が81.5%を占めます。開催頻度が週1回以上のところは38.9%にとどまり、1回あたりの参加者は1〜20人が81.7%でした(前掲調査)。
公民館で20人以下が体操をしている、月に数回の集まり。それが平均像です。立派な施設も器具もいりません。
一方で偏りもあります。性別と年齢が把握できている68万8,349人のうち、男性は20.2%、女性が79.8%。年齢別では75歳以上が74.2%でした(前掲調査)。前期高齢者の男性が入りにくい場になっている、という課題がこの数字から読み取れます。
参加することに、どれだけの意味があるか
効果の話になるので、根拠の強さを分けて書きます。
日本には大規模な前向きコホート研究があります。Kanamori らは65歳以上の1万2,951人を4年間追跡し、どの組織にも参加していない人と比べて、1種類に参加している人の要介護状態の発生ハザード比が0.83(95%信頼区間0.73〜0.95)、2種類で0.72(0.61〜0.85)、3種類以上で0.57(0.46〜0.70)だったと報告しています。種類別では、スポーツ組織0.64(0.54〜0.81)、趣味の組織0.75(0.64〜0.87)、地域の組織0.85(0.76〜0.96)でした(Kanamori S ら. PLoS One. 2014;9(6):e99638)。
観察研究ですから、「もともと元気な人が参加していただけ」という逆向きの説明を完全には排除できません。この研究では追跡開始から1年以内に認定を受けた366人を除いた再解析も行われ、傾向は保たれています。それでも、参加すれば要介護を防げると読むのは行き過ぎです。関連の方向と、おおよその大きさの目安。そこまでにとどめて受け取るのが妥当だと考えます。
ただ、種類を増やすほど数字が下がる関係が見えている点は、実務上そのまま使えます。体操の会に一つ通っているなら、もう一つ、性格の違う集まりを足す。それだけの話です。
専門職を呼べる仕組みもある
地域リハビリテーション活動支援事業は、市町村がリハビリテーション専門職などを通いの場や個人宅、地域ケア会議に派遣できる仕組みです。令和5年度は1,302市町村(74.8%)が実施し、派遣を依頼した職種は理学療法士1,174市町村(67.4%)、作業療法士901市町村(51.8%)、管理栄養士・栄養士742市町村(42.6%)でした(前掲調査)。
「体操の内容が体に合っているか見てほしい」「お茶でむせる人がいる」。こうした相談を通いの場の側から市町村に上げると、専門職が来ることがあります。使われていない制度です。
探すときの手順
- 地域包括支援センターに電話し、基本チェックリストを受けたいと伝える
- 住まいの学区や町丁目で開かれている通いの場の一覧をもらう
- 週1回以上開催しているところがあれば、そこを優先して見学する
- 合わなければ別の場に移る(同じ市内に複数あるのが普通です)
参加費は場によって違います。金額は必ず現地で確認してください。
通いの場が一か所もない市町村は、1,741のうち31にすぎません(98.2%にはあります)。ほとんどの地域に、何かはあります。あとは名前を知って、電話を1本かけるかどうかです。
参考文献
- 厚生労働省老健局老人保健課「介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果(概要)」2024年 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/R5survey_gaiyou.pdf
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「基本チェックリストとは」2023年8月2日更新 https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-shien/kihonchekkurisuto.html
- Kanamori S, Kai Y, Aida J, et al. Social participation and the prevention of functional disability in older Japanese: the JAGES cohort study. PLoS One. 2014;9(6):e99638. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0099638
参考文献
- 太田 差惠子. (2022). 『親の介護でやってはいけない』. 翔泳社. Amazonで見る ›
- 太田 差惠子. (2021). 『マンガでやさしくわかる 介護とお金』. 日本能率協会マネジメントセンター. Amazonで見る ›
- 和田 秀樹. (2023). 『老後ひとり暮らしを楽しむ65のヒント』. 幻冬舎. Amazonで見る ›
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