年を重ねると、若い頃と同じ食事量でも筋肉は落ちやすくなります。私は介護の現場で10年間、たくさんの高齢者を見てきました。歩けなくなる方の多くに共通していたのが、たんぱく質不足です。今日は「体重1kgあたり1.2g」という具体的な目安と、その摂り方をお伝えします。
なぜ高齢者はたんぱく質が多く必要なのか
若い人と同じ量では足りません。これは私見ではなく、研究が示しています。PROT-AGE研究グループは、65歳以上の健康な高齢者に1日あたり体重1kgにつき1.0〜1.2gのたんぱく質を推奨しました(Bauer J et al. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542-559)。同グループは、運動習慣のある人や虚弱な人には、さらに多い1.2〜1.5gを推奨しています。
欧州のESPEN専門家グループも、同じく1.0〜1.2gを推奨しています(Deutz NEP et al. Clin Nutr. 2014;33(6):929-936)。日本でも、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2025年版)』は、65歳以上でたんぱく質の目標量の下限を総エネルギーの15%以上に引き上げ、フレイル予防のための摂取の重要性を強調しています(2024年10月公表)。
不足すると、どうなるのか。韓国の高齢者を対象にしたメタ解析では、たんぱく質摂取が体重1kgあたり0.8g未満の群は、1.2g以上の群と比べてサルコペニア(筋肉減少症)のリスクが約1.79倍高いと報告されています(オッズ比1.79、95%信頼区間1.53〜2.10。Nutrients. 2024;16(24):4350)。数字は、少ないほど筋肉が減りやすいことをはっきり示しています。
あなたの目標量を計算してみましょう
計算はかんたんです。体重に1.2をかけるだけです。
| 体重 | 1日の目標たんぱく質(×1.2g) | 目安 |
|---|---|---|
| 50kg | 60g | 3食で1食あたり約20g |
| 60kg | 72g | 3食で1食あたり約24g |
| 70kg | 84g | 3食で1食あたり約28g |
ポイントは、1日の合計だけでなく「1食ごと」に分けて摂ることです。PROT-AGE研究グループは、筋肉の合成を促すため、毎食25〜30g程度のたんぱく質を摂ることを勧めています。朝はパンとコーヒーだけ、という方は特に朝食での不足に注意が必要です。
1食20〜30gを満たす身近な食品
むずかしく考える必要はありません。次の食品で、たんぱく質はしっかり摂れます。
- 卵1個:約6g
- 納豆1パック:約8g
- 木綿豆腐2分の1丁:約10g
- 鮭1切れ(80g):約18g
- 鶏むね肉100g:約22g
- ギリシャヨーグルト1個:約10g
- 牛乳コップ1杯:約7g
たとえば朝食に「卵1個+納豆1パック+牛乳1杯」で、約21gになります。これで朝の目標はほぼ達成です。私の経験では、毎食に主菜を1品しっかり置くことを意識するだけで、多くの方が目標に近づきます。
ただし、腎臓に持病のある方は、たんぱく質を制限すべき場合があります。摂取量を増やす前に、必ずかかりつけ医にご相談ください。サプリメントやプロテイン飲料に頼る前に、まずは食事からが基本です。
今日から始める小さな一歩
まずはご自分の体重に1.2をかけて、目標量を出してみてください。そして今日の朝食に、たんぱく質を1品足してみましょう。私は、筋肉は何歳からでも応えてくれると考えています。あなたの今日の朝食には、たんぱく質は何グラム入っていましたか。
高齢期の栄養やたんぱく質について、より詳しく学びたい方は、関連書籍も参考になります。
参考文献
- Bauer J, Biolo G, Cederholm T, et al. Evidence-based recommendations for optimal dietary protein intake in older people: a position paper from the PROT-AGE Study Group. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542-559.
- Deutz NEP, Bauer JM, Barazzoni R, et al. Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: Recommendations from the ESPEN Expert Group. Clin Nutr. 2014;33(6):929-936.
- Kim H, et al. Association of Protein Intake with Sarcopenia and Related Indicators Among Korean Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2024;16(24):4350.
- 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書(2024年10月公表)
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものです。持病のある方や治療中の方は、食事内容を変える前にかかりつけ医にご相談ください。
次回は木曜日、道具・テクノロジーのテーマでお届けします。