私は、健康長寿の土台は「眠り」だと考えています。食事や運動は意識しても、睡眠は後回しになりがちです。けれど近年の研究は、睡眠が脳と寿命を静かに左右することを示しています。今日は、私が大切にしている眠りの数字を3つ、出典とともにお話しします。
なぜ「7時間」が目安なのか
睡眠時間と死亡リスクの関係は、U字型を描きます。短すぎても長すぎてもリスクが上がり、最も低いのが約7時間です。前向きコホート研究のメタ解析では、7時間を基準に、睡眠が1時間短くなるごとに全死亡リスクが約6%上昇し、1時間長くなるごとに約13%上昇すると報告されています(Yin J et al. Journal of the American Heart Association. 2017;6(9):e005947)。
脳への影響も見過ごせません。約8,000人を25年追跡したWhitehall II研究では、50代で睡眠が6時間以下の人は、7時間の人に比べて将来の認知症リスクが高く、ハザード比1.22(60代では1.37)でした。50代から70代まで短い睡眠が続いた人では、認知症リスクが約30%高いという結果です(Sabia S et al. Nature Communications. 2021;12:2289)。これは観察研究なので因果の断定はできませんが、関連の方向ははっきりしています。
厚生労働省も2024年2月公表の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』で、高齢者は床上時間が8時間以上にならないことを一つの目安として示しています。長く横になることが、必ずしも良い眠りではないのです。
眠りの質を決める「寝室の温度」
時間と同じくらい、私が重視しているのが寝室の温度です。65歳以上の高齢者50人、延べ約11,000晩を調べた研究では、夜間の室温が20〜25℃のときに睡眠効率が最も高く、25℃から30℃に上がると睡眠効率が5〜10%低下したと報告されています(Baniassadi A et al. Science of the Total Environment. 2023;899:165623)。
ただしこの研究は、最適な温度に個人差が大きいことも示しています。私はそう思います。万人に正解の一点があるわけではなく、自分の体に合う温度を探すことが大切なのでしょう。
今夜から試せる3つの目安
| 項目 | 目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 睡眠時間 | 約7時間 | 死亡リスクが最も低い(Yin 2017) |
| 寝室の温度 | 20〜25℃ | 睡眠効率が最も高い(Baniassadi 2023) |
| 床上時間 | 8時間未満 | 厚労省 睡眠ガイド2023 |
私の経験では、就寝の時刻より「起きる時刻」をそろえる方が、眠りは安定します。これは私見ですが、毎朝同じ時間に光を浴びると、夜の眠気が自然に訪れる気がします。科学的な断定ではなく、私が続けている習慣としてお伝えします。
眠れない日が続くときは
一時的な寝つきの悪さは誰にでもあります。けれど、強い不眠が2週間以上続く、日中の眠気で生活に支障が出るといった場合は、背景に別の病気が隠れていることもあります。睡眠薬やサプリメントの使用、運動の強度を変えるときも含め、自己判断せず、かかりつけ医にご相談ください。
あなたは昨夜、何時間眠れましたか。まずは一週間、自分の睡眠時間と寝室の温度を記録してみてはいかがでしょう。
参考文献
- Yin J, Jin X, Shan Z, et al. Relationship of Sleep Duration With All-Cause Mortality and Cardiovascular Events: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Journal of the American Heart Association. 2017;6(9):e005947.
- Sabia S, Fayosse A, Dumurgier J, et al. Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nature Communications. 2021;12:2289.
- Baniassadi A, Manor B, Yu W, et al. Nighttime ambient temperature and sleep in community-dwelling older adults. Science of the Total Environment. 2023;899:165623.
- 厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』(2024年2月公表).
次回は木曜日、暮らしを支える道具・テクノロジーのテーマでお届けします。