介護する人は誰に助けを求めればいいのか

「自分が倒れたら、この人はどうなるのか」。介護を担っている方がいちばん口に出しにくい心配は、たぶんこれです。

心配しているのに、誰にも相談していない。

総務省統計局の『令和4年就業構造基本調査』(2023年7月公表)によると、2022年10月1日現在で介護をしている人は全国に628万8千人います。そのうち有業者は364万6千人。介護をしている人の58.0%が、働きながら介護をしている計算です。5年前より2.8ポイント上がりました。厚生労働省の介護休業制度特設サイトは同じ調査をもとに、雇用されて働く人のうち55〜59歳では12.3%が介護をしていると示しています。10人に1人以上という水準です。

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数字より先に、負担「感」を見てください

家族介護者の心の状態については、査読を経たメタ解析があります。del-Pino-Casadoらが2019年に PLoS ONE 誌に発表した系統的レビューとメタ解析は、20か国55研究・のべ9,847人の介護者データを統合し、主観的な介護負担感と抑うつ症状のあいだに大きな正の関連(r=0.514、95%信頼区間0.486〜0.541)を報告しました。研究間のばらつきは小さく(I²=8.6%)、認知症の人を介護している群では関連がより強いことも示されています。

観察研究をまとめたものですから、「負担感が抑うつを引き起こす」と因果まで言い切ることはできません。それでも、本人が感じている重さがこれほど抑うつと結びついているという事実は、周囲の見立てを変えます。外から見て「まだ大丈夫そう」は、あてになりません。

最初に電話する先は、もう決まっています

相談先を探すところで力尽きてしまう方が多いので、先に書きます。地域包括支援センターです。

厚生労働省の説明によれば、地域包括支援センターは高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくりなどを担う中核機関として市町村が設置しており、令和7年4月末現在で全国に5,487か所、支所(ブランチ)を含めると7,374か所あります。同省は「介護を必要とする高齢者のみならず、家族介護者も含めて社会全体で支えていくことが必要」として、市町村・地域包括支援センター向けの家族介護者支援マニュアルや、家族介護者のつどいの場の運営マニュアルも公表しています。支援の対象に、支える側の人がはっきり入っているということです。

本人の要介護認定がまだでも、家族だけの相談で構いません。

眠れない。食べられない。涙が急に出る。そうした状態が続いているなら、センターへの相談と並行して、かかりつけ医にも今の暮らしのことを話してください。介護サービスの相談をする場所と、自分の体調を診てもらう場所は、無理に分けなくていいのです。

ショートステイの効果は、まだ証明されていません

レスパイトの中心にあるショートステイについては、正直に書いておきます。コクラン共同計画のレビュー(Maayanら、2014年、CD004396)は、認知症の人とその介護者を対象としたランダム化比較試験4件・753人を検討し、レスパイトケアに介護者の負担や施設入所率を改善する効果があるとも、害があるとも示せなかったと結論づけました。著者らは、この結果は効果がないことの証明ではなく、この領域に質の高い研究が足りないことを反映しているのかもしれない、と注意を促しています。

つまり「休んでも意味がない」という話ではありません。研究のほうが追いついていないだけです。使う理由は効果量の数字ではなく、あなたが生活を続けられるかどうかにある、と私は考えています。

2025年4月から、勤め先の側の義務が増えました

育児・介護休業法の介護に関する改正事項は、厚生労働省の介護休業制度特設サイトによると2025年(令和7年)4月1日から施行されています。同サイトでは、まとまった期間休むための介護休業、スポットで休むための介護休暇のほか、短時間勤務等の措置、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限が、それぞれ独立した制度として解説されています。

勤め先に切り出しにくいときは、外に窓口があります。厚生労働省は、育児・介護休業法に関する相談先として都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)を案内しています。会社と直接やり取りする前に、一度そこで整理してもらうほうが気持ちが楽になります。

支える人が続けられる形に組み替える

介護は、終わる日の見えない仕事です。だからこそ「頑張れるところまで」ではなく「続けられる形」に組み替えたほうが、結果として長くもちます。センターに電話する。医師に「眠れない」と言う。ショートステイを家族の休息のために申し込む。どれも後ろめたいことではありません。

支える人が倒れないことが、支えられる人の暮らしを守ります。

参考文献

  • 総務省統計局『令和4年就業構造基本調査 結果の要約』2023年7月21日.
  • 厚生労働省「介護休業制度特設サイト」(2026年8月閲覧).
  • 厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」(2026年8月閲覧).
  • 厚生労働省「地域包括ケアシステム」(地域包括支援センターの設置状況は令和7年4月末現在、家族介護者支援の項).
  • del-Pino-Casado R, Rodríguez Cardosa M, López-Martínez C, Orgeta V. The association between subjective caregiver burden and depressive symptoms in carers of older relatives: A systematic review and meta-analysis. PLoS ONE. 2019;14(5):e0217648.
  • Maayan N, Soares-Weiser K, Lee H. Respite care for people with dementia and their carers. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 1. Art. No.: CD004396.
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参考文献

  1. 太田 差惠子. (2022). 『親の介護でやってはいけない』. 翔泳社. Amazonで見る ›
  2. 太田 差惠子. (2021). 『マンガでやさしくわかる 介護とお金』. 日本能率協会マネジメントセンター. Amazonで見る ›
  3. 和田 秀樹. (2023). 『老後ひとり暮らしを楽しむ65のヒント』. 幻冬舎. Amazonで見る ›
  4. 杉山 孝博. (2020). 『認知症の人を支える 心のケア』. 中央法規出版. Amazonで見る ›

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

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