介護記録をLIFEで使えるデータに変える

2026年8月、LIFEへのデータ提出先が変わりました。

厚生労働省の「科学的介護情報システム(LIFE)について」のページによると、LIFEは2026年(令和8年)5月11日から、公益社団法人国民健康保険中央会が運用する「国保中央会運用LIFE」として運用が開始されています。厚生労働省が運用していた旧システムからの移行期間は同年7月31日に終了しました。同ページには「8月以降の加算算定にあたっては、国保中央会LIFEでの様式情報の提出が必要です」と明記されています。

提出先を取り違えれば、加算は立ちません。

目次

LIFEは「根拠のための情報システム」

名称はLong-term care Information system For Evidenceの頭文字です。厚生労働省老健局老人保健課長通知(老老発0315第4号、令和6年3月15日)は、令和3年度から、介護施設・事業所が利用者の状態や行っているケアの計画・内容等を提出し、入力内容が集計されて当該施設等にフィードバックされる仕組みとして運用を開始した、と説明しています。令和6年度改定では、入力負担等の課題に対応するため入力項目の見直しが行われました。

同じ通知には、記入者名や自由記載の箇所については提出を求めない、とも書かれています。理由は、フィードバックに活用するという観点から。LIFEに出すのは、集計できる形の情報だけということです。

一日の遅れが、利用者全員分の加算を消す

実務でいちばん重いのはここです。科学的介護推進体制加算では、定められた月の翌月10日までに情報を提出することが求められます。提出を行えない事実が生じた場合は直ちに届出を出さなければならず、その事実が生じた月のサービス提供分から情報の提出が行われた月の前月までの間、利用者等全員について加算を算定できません。

通知は例まで挙げています。4月の情報を5月10日までに提出できない場合は、4月サービス提供分から算定ができない。栄養マネジメント強化加算、栄養アセスメント加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算なども同じ扱いです。

事業所単位で全員分が飛ぶ以上、締切の管理は記録係の仕事ではなく管理者の仕事になります。

加算ごとに、提出のタイミングが違う

令和6年3月15日の通知が定める主な提出頻度は、次のとおりです。

  • 科学的介護推進体制加算:算定を開始しようとする月、新規に利用を開始した月、それ以外に少なくとも3月ごと、利用を終了する月
  • 個別機能訓練加算(Ⅱ)(Ⅲ):計画を新規に作成した月、計画を変更した月、それ以外に少なくとも3月に1回
  • リハビリテーションマネジメント加算(ロ)(ハ)、栄養マネジメント強化加算、口腔衛生管理加算(Ⅱ)、口腔機能向上加算(Ⅱ):個別機能訓練加算(Ⅱ)と同じ
  • ADL維持等加算:評価対象利用開始月と、その翌月から起算して6月目の月
  • 褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算:算定を開始しようとする月または利用開始月と、少なくとも3月に1回行う評価の月
  • かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ):入所した月、処方内容に変更が生じた月、それ以外に少なくとも3月に1回、退所する月

提出期限はいずれも、その月の翌月10日まで。

何を書くかは、様式がすでに決めている

「よい記録とは何か」を抽象的に議論するより、様式を開いたほうが早いです。別紙様式1(科学的介護推進に関する評価)が求めているのは、要介護度、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、そしてADLの10項目。食事、椅子とベッド間の移乗、整容、トイレ動作、入浴、平地歩行、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロール。Barthel Indexの構成そのものです。

口腔・栄養の欄では、身長と体重に加えて、義歯の使用、むせ、歯の汚れ、歯肉の腫れ・出血。認知症の欄では、意思疎通や起床、食事への関心などを見るVitality Indexが並びます。

日々の記録がこの粒度で残っていれば、提出月になって情報を探し直す必要はありません。「ぐったりしていた」ではなく「昼食の摂取量は全体で30%、声かけには返答あり」と書いておく。様式のために書くのではなく、様式が求めている観察を、ふだんのことばで残しておくという順番です。

フィードバックを開かないなら、提出はただの事務作業

LIFEは出して終わりの仕組みではありません。厚生労働省は「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」や自治体職員向けの手引き、年度ごとの事例集を公開し、フィードバックの活用を支援しています。令和6年度介護報酬改定でも、LIFE関連加算は、質の高い情報の収集・分析を可能とする観点からのデータ提出頻度の見直しと入力負担の軽減、そしてアウトカム評価の充実という方向で見直されました。

提出はPDCAのDで終わり、Cはフィードバックを開いた人の手で始まります。

3か月ごとに出す仕組みは、裏返せば3か月ごとに立ち止まる機会が制度として組み込まれているということ。カンファレンスの日程を、提出期限である翌月10日より前に置いてみる。それだけで、記録は書類から道具に変わります。

参考文献

  • 厚生労働省老健局老人保健課長「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」老老発0315第4号、令和6年3月15日.
  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」(国保中央会運用LIFEへの移管、移行期間の終了、利活用の手引き・事例集).
  • 古元重和(厚生労働省老健局老人保健課長)「令和6年度介護報酬改定について」2024年3月13日、独立行政法人福祉医療機構セミナー資料.(LIFE関連加算の見直しの方向)
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参考文献

  1. 太田 差惠子. (2022). 『親の介護でやってはいけない』. 翔泳社. Amazonで見る ›
  2. 太田 差惠子. (2021). 『マンガでやさしくわかる 介護とお金』. 日本能率協会マネジメントセンター. Amazonで見る ›
  3. 和田 秀樹. (2023). 『老後ひとり暮らしを楽しむ65のヒント』. 幻冬舎. Amazonで見る ›
  4. 杉山 孝博. (2020). 『認知症の人を支える 心のケア』. 中央法規出版. Amazonで見る ›

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

「110歳まで自分の足で歩く」を合言葉に、科学的根拠のある情報だけをお届けします。

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