あなたの名前は、お住まいの市町村がつくっている避難行動要支援者名簿に載っているでしょうか。
載せてもらった覚えがない、という方が多いはずです。名簿の作成は災害対策基本法にもとづく市町村の義務で、内閣府と消防庁が令和7年6月20日に公表した調査結果(令和7年4月1日現在)によれば、全国1,741の市町村すべてで作成済みになっています。掲載されている人は全国で6,921,179人。国民のおよそ5.5%にあたります。
名簿に載っていても、平時は共有されないことがある
同じ調査で、平時から名簿情報を消防や民生委員などの避難支援等関係者に提供している市町村は1,653団体、94.9%にのぼります。ところが、名簿に載っている人のうち実際に平時から情報が提供されているのは40.1%。残る約6割は、災害が起きるまで誰にも共有されていません。
理由は制度の設計にあります。平時の名簿情報の提供には、条例に特別の定めがある場合を除き、本人の同意が必要です。災害時には同意を要しませんが、それは災害が起きたあとの話。事前に近所の誰かが「あの家に足の悪い方がいる」と知っている状態をつくるには、本人が同意しておく必要があります。
同意していない、ではなく、聞かれた記憶がない。そういう方が相当数いると考えています。
提供先として地域防災計画に定められている相手は、民生委員が1,672団体で最多。次いで消防本部・消防署等が1,482団体、都道府県警察が1,422団体、自主防災組織が1,421団体という順です。
個別避難計画は、まだ7人に1人
名簿は「誰が支援を要するか」のリストにすぎません。実際に誰が、いつ、どこへ連れて行くのかを決めるのが個別避難計画です。令和3年の改正で災害対策基本法に位置づけられ、市町村が作成に努める努力義務となりました。
前掲の調査によれば、令和7年4月1日現在で作成に着手している市町村は1,691団体(97.1%)、未作成は50団体(2.9%)。市町村単位ではほぼ全国に広がっています。
人単位で見ると景色が変わります。計画が作成された要支援者は967,747人。名簿掲載者に対する作成率は全国で14.0%です。作成率が2割以下にとどまる市町村が920団体あり、全体の52.8%を占めます。前年度1年間に新たに作成されたのは181,635人分で、累計は1,451,097人分。
7人に1人。
それが今の到達点です。
市町村が取組のポイントとして挙げた事項の上位は、本人のことをよく知る方の協力を得て作成すること(1,069団体)、地域との連携(1,057団体)、庁内外との連携(949団体)、優先度が高い方の計画作成(843団体)、福祉専門職との連携(789団体)でした。計画にはおもに、避難支援等を実施する者と避難先を書きます。本人の同意を得て作成します。
ケアマネジャーが関わる場面が多いのは、この「本人のことをよく知る方」という部分です。要介護認定を受けている方なら、次の訪問時に切り出せます。
福祉避難所へ直接行けるかを確かめる
一般の避難所での生活が難しい方のために、内閣府は「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を平成28年4月に定め、令和3年5月に改定しました。この改定は、令和3年の災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和3年法律第30号、5月10日公布・5月20日施行)を受けたものです。
改定の要点のひとつが、指定福祉避難所への直接の避難です。個別避難計画で指定福祉避難所を避難先としている方は、まず近くの一般避難所へ行ってから移るのではなく、はじめからそこへ向かう。名簿だけでは足りません。
なぜここまで念入りに準備するのか
内閣府の平成23年版高齢社会白書によれば、東日本大震災で被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は4月11日までに13,154人。検視等を終えて年齢が判明していた11,108人のうち、60歳以上が7,241人で65.2%を占めました。
3人に2人。
津波の速度に、体が追いつかなかったということです。
備蓄は3日ではなく1週間
農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」は、備蓄量の考え方をこう説明しています。過去の経験によれば、災害発生からライフライン復旧まで1週間以上を要するケースが多い。災害支援物資が3日以上到着しないことや、物流機能の停止によって1週間はスーパーマーケットやコンビニで食品が手に入らないことが想定される。このため、最低3日分から1週間分を人数分そろえておくことが望ましい、と。
ハザードマップを確認して、地域の状況に応じ2週間分など多めに備えることも勧められています。方法として同省が案内しているのがローリングストックで、普段食べている食品を少し多めに買い置きし、古いものから使って買い足していくやり方です。専用の非常食を別管理しなくてよいぶん、続きます。
同省は、乳幼児、高齢者、食べる機能が弱くなった方、慢性疾患の方、食物アレルギーの方に向けた「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」も別に用意しています。かむ力や飲み込む力が落ちている方は、一般向けの備蓄食品では食べられないことがあるからです。
薬については、常備薬の予備をどれだけ持っておけるか、災害時に処方をどう受け直すかを、かかりつけ医にご相談ください。お薬手帳の写しを備蓄と一緒に入れておくと、避難先での説明が早くなります。
今日、電話一本でできること
市町村の防災担当課か地域包括支援センターに、三つ聞いてください。自分(または親)の名前が避難行動要支援者名簿に載っているか。平時から民生委員や自主防災組織に情報が提供される同意をしているか。個別避難計画は作られているか。
作成率14.0%という数字は、裏を返せば、申し出れば順番が回ってくる余地がまだあるという意味でもあります。優先度が高い方から作る運用をしている市町村が843団体。自分がその「優先度が高い方」に該当することを、役所は自動的には知りません。
参考文献
- 内閣府・消防庁「避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果(令和7年4月1日現在)」令和7年6月20日
- 内閣府(防災担当)「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」平成28年4月(令和3年5月改定)
- 内閣府「平成23年版高齢社会白書」第1章第2節6(5)東日本大震災における高齢者の被害状況
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド(1)食品の家庭備蓄のすすめ」
参考文献
- 太田 差惠子. (2022). 『親の介護でやってはいけない』. 翔泳社. Amazonで見る ›
- 太田 差惠子. (2021). 『マンガでやさしくわかる 介護とお金』. 日本能率協会マネジメントセンター. Amazonで見る ›
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