認知症ケアは、原因疾患・進行段階・本人の生活歴によって関わり方が変わります。特にBPSDへの対応は、原因を読み解き、本人の世界に寄り添うパーソン・センタード・ケア(PCC)の視点が不可欠です。
1. 中核症状とBPSD
認知症の症状は、脳の障害から直接生じる「中核症状」(記憶障害・見当識障害・実行機能障害)と、それに本人の性格・環境・体調が絡んで現れる「BPSD」(不安・幻覚・徘徊・興奮・抑うつ・拒否など)に分かれます。BPSDは適切なケアで軽減できます。
2. 主な原因疾患と特徴
アルツハイマー型は記憶障害が中心、レビー小体型は幻視・パーキンソン症状・日内変動、血管性は階段状進行とまだら認知症、前頭側頭型は脱抑制や常同行動が目立ちます。
3. パーソン・センタード・ケアとは
イギリスのトム・キットウッドが提唱した考え方で、「認知症の人を一人の人として尊重し、その人の視点に立ってケアする」ことを原則とします。心理的ニーズ(くつろぎ・愛着・共にあること・たずさわること・自分らしさ)を満たすことが目標です。
4. BPSDのアセスメント
BPSDが起きたときは、①身体面(痛み・便秘・薬の副作用・脱水)②心理面(不安・恐怖・寂しさ)③環境面(騒音・照明・人の出入り)の3視点で原因を探ります。「困った行動」ではなく「困っているサイン」と捉えることが第一歩です。
5. 関わり方の基本
正面からゆっくり近づき、目線を合わせて低めの声で短く話す。否定しない、急かさない、選択肢を絞って提示する。回想法・音楽療法などの非薬物療法を組み合わせると効果的です。
6. ユマニチュードとバリデーション
「見る・話す・触れる・立つ」を柱とするユマニチュードや、本人の感情に共感するバリデーション療法は、PCCを実践する具体的な技法として現場で広がっています。
7. 家族支援と地域づくり
家族の理解と心の余裕がBPSD軽減の鍵です。認知症カフェ・家族会・若年性認知症支援コーディネーターなどの社会資源を紹介しましょう。
まとめ
BPSDは「症状を抑える」のではなく「原因を整える」ことで軽減します。本人の人生の物語を知り、心地よい環境と関わりを提供することがPCCの本質です。
参考文献
- 太田 差惠子. (2022). 『親の介護でやってはいけない』. 翔泳社. Amazonで見る ›
- 太田 差惠子. (2021). 『マンガでやさしくわかる 介護とお金』. 日本能率協会マネジメントセンター. Amazonで見る ›
- 和田 秀樹. (2023). 『老後ひとり暮らしを楽しむ65のヒント』. 幻冬舎. Amazonで見る ›
- 杉山 孝博. (2020). 『認知症の人を支える 心のケア』. 中央法規出版. Amazonで見る ›
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