生きがいは寿命を延ばすか|4万人の追跡

「生きがい」という言葉は、日本語にしかありません。英語では ikigai とそのまま表記されます。私はこの言葉を、日本人が世界に贈れる財産だと思っています。

ただし本稿で扱うのは、精神論ではありません。生きがいと寿命の関係は、日本の大規模コホート研究で数字として測られています。今日はその中身をご紹介します。

目次

4万3千人を7年追った日本の研究

宮城県大崎市で行われた大崎コホート研究があります。40歳から79歳の住民4万3,391人を、約7年間追跡しました。

結果はこうです。「生きがいがない」と答えた人は、「ある」と答えた人に比べて、全死亡リスクが1.5倍でした(95%信頼区間 1.3〜1.7、Sone T et al. Psychosomatic Medicine. 2008;70(6):709-715)。

死因別に見ると差の出方が違います。心血管疾患による死亡は1.6倍、事故など外因死は1.9倍でした。一方でがんによる死亡は1.3倍(1.0〜1.6)で、統計的にはっきりした差とは言えませんでした。

これは前向きコホート研究です。関連の方向は強く示されますが、生きがいが直接寿命を延ばすと証明したわけではありません。

全国規模のJACC研究でも、男女7万3,272人を平均12.5年追跡し、生きがいがある人で全死亡リスクが低いことが報告されています(Tanno K et al. Journal of Psychosomatic Research. 2009;67(1):67-75)。

世界13万人のデータでも方向は同じ

これは日本人だけの話ではありません。

Cohen R らは、10件の前向き研究、合計13万6,265人分のデータをメタ解析しました。人生の目的意識(purpose in life)が高い人は、全死亡と心血管イベントの相対リスクが0.83でした(Psychosomatic Medicine. 2016;78(2):122-133)。約17%低いという計算になります。

メタ解析はエビデンスの階層で最も強い部類です。国も文化も違う集団で同じ方向が出ている点を、私は重く見ています。

研究 対象・追跡 主な結果
大崎コホート(Sone 2008) 日本 4万3,391人/7年 生きがいなしで全死亡リスク1.5倍
JACC研究(Tanno 2009) 日本 7万3,272人/平均12.5年 生きがいありで全死亡リスク低下
メタ解析(Cohen 2016) 10研究 13万6,265人 目的意識が高い人で相対リスク0.83

統計が示す、生きがいの「置き場所」

では、生きがいはどこから生まれるのか。ここに参考になる公的データがあります。

内閣府『令和7年版高齢社会白書』(2025年6月公表)によると、直近1年間に何らかの社会活動に参加した65歳以上の人のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた人は84.6%でした。どの活動にも参加しなかった人を23.0ポイント上回っています。

ちなみに65歳以上全体では、生きがいを十分感じているが22.9%、多少感じているが49.4%、合計72.3%です(内閣府『令和4年版高齢社会白書』2022年6月公表)。

これは調査であって、因果関係を示すものではありません。生きがいがあるから外に出るのか、外に出るから生きがいが生まれるのか、この数字だけでは決められません。

ただ、私の経験から申し上げます。私は10年間、介護の現場におりました。デイサービスの管理者もしていました。そこで見てきたのは、「誰かに必要とされている感覚」を持つ方が、驚くほど元気だという光景です。

役割は大きくなくていいのです。植木の水やり、孫への手紙、町内会の回覧板。私が思うに、生きがいとは探し当てるものではなく、日々の中に置くものです。

社会的なつながりの重要性は、科学の側からも裏づけがあります。Holt-Lunstad J らのメタ解析は、社会的孤立や孤独が死亡リスクの上昇と関連することを示しました(Perspectives on Psychological Science. 2015;10(2):227-237)。

今日から置ける、5つの小さな役割

  • 週に1回、決まった曜日に人と会う予定を入れる
  • 誰かのためにする用事を、1日1つ持つ
  • 始めた記録を残す(日記、家計簿、歩数でもよい)
  • 教えられることを1つ書き出す(料理、仕事、地域の歴史)
  • 3か月先の楽しみを1つ決めておく

気分の落ち込みが2週間以上続く場合や、意欲が出ない状態が長引く場合は、精神論で片づけないでください。うつ病など治療できる病気の可能性があります。かかりつけ医にご相談ください。運動量を増やす場合も、持病のある方は事前に主治医にご相談ください。

お聞きしたいことがあります。あなたが明日、誰かのためにできる小さな用事は何でしょうか。

参考文献

  • Sone T, Nakaya N, Ohmori K, et al. Sense of life worth living (ikigai) and mortality in Japan: Ohsaki Study. Psychosomatic Medicine. 2008;70(6):709-715.
  • Tanno K, Sakata K, Ohsawa M, et al. Associations of ikigai as a positive psychological factor with all-cause mortality and cause-specific mortality among middle-aged and elderly Japanese people. Journal of Psychosomatic Research. 2009;67(1):67-75.
  • Cohen R, Bavishi C, Rozanski A. Purpose in life and its relationship to all-cause mortality and cardiovascular events: a meta-analysis. Psychosomatic Medicine. 2016;78(2):122-133.
  • Holt-Lunstad J, Smith TB, Baker M, et al. Loneliness and social isolation as risk factors for mortality: a meta-analytic review. Perspectives on Psychological Science. 2015;10(2):227-237.
  • 内閣府『令和7年版高齢社会白書』(2025年6月公表)第1章第2節3 学習・社会参加
  • 内閣府『令和4年版高齢社会白書』(2022年6月公表)第1章第3節1 生きがいを感じる程度について

生きがいと健康長寿の話は、拙著『110歳まで歩く 日本人が世界に贈る健康長寿の知恵』でも一章を割いて扱っています。Amazonで見る

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。個別の症状や治療については、必ずかかりつけ医にご相談ください。

次回は月曜日、食事・栄養のテーマでお届けします。

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

「110歳まで自分の足で歩く」を合言葉に、科学的根拠のある情報だけをお届けします。

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