30分に5分立つ|座りすぎを断つ習慣

朝の体操をきちんとこなし、夕方には散歩もする。それなのに一日の残りは椅子に沈んでいる。私はデイサービスの管理者をしていたころ、この型の方をたくさん見てきました。運動はしている。けれど座っている時間の総量が長いのです。

近年の研究は、この「運動はしているが座りすぎ」という状態を、運動不足とは別の独立した問題として扱うようになりました。今日はそこを整理します。

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座り続ける時間そのものがリスクになる

台湾で48万1,688人を1996年から2017年まで追跡した前向きコホート研究があります。仕事中ほとんど座っている人は、そうでない人と比べて全死亡リスクが16%高く、心血管疾患による死亡リスクは34%高いと報告されています(Gao W et al. JAMA Network Open. 2024;7(1):e2350680)。

ただしこの研究には救いがあります。座位中心の人でも、余暇の身体活動を1日15〜30分増やすと、死亡リスクは座り仕事でない人と同じ水準まで下がっていました。追加すべき量は、思ったより少ないのです。

さらに、米国と北欧の7つの前向きコホートを統合した個人参加者データメタ解析では、座位時間を1日30分減らすだけで、集団全体では死亡の7.3%が予防し得ると推計されています(The Lancet. 2025. doi:10.1016/S0140-6736(25)02219-6)。

「30分に5分」が実験で最も効いた

では、どう区切ればよいのか。ここに小さいけれど示唆に富む試験があります。米コロンビア大学の無作為化クロスオーバー試験です。参加者に8時間椅子に座ってもらい、歩行休憩の入れ方を5通り比べました(Duran AT et al. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2023;55(5):847-855)。

歩行休憩の入れ方 結果
60分ごとに1分 明確な改善は乏しい
30分ごとに1分 気分と疲労感が改善
60分ごとに5分 気分と疲労感が改善
30分ごとに5分 食後血糖の上昇が58%抑制。血圧も低下

血圧はいずれの歩行条件でも、座りっぱなしと比べて4〜5mmHg下がりました。しかし血糖と血圧の両方をはっきり動かしたのは「30分ごとに5分」だけでした。

ここで正直に書いておきます。これは参加者11名の急性効果を見た小規模試験であり、長期の死亡率を示したものではありません。58%という数字をそのまま「寿命が延びる」と読み替えることはできません。それでも実行の目安としては十分に使えると、私は考えます。

私の区切り方

私は執筆が長引くと平気で2時間座り続けます。そこで台所のタイマーを使うことにしました。

  • 机に向かうときは30分でタイマーを鳴らす
  • 鳴ったら立って、家の中を1周する(およそ2〜3分)
  • 洗い物、ゴミ出し、郵便受けの確認をこの時間に割り当てる
  • テレビは1話ごとに立つ。コマーシャルの間でもよい
  • 電話は座らずに受ける

大事なのは強度ではありません。速く歩く必要はなく、立って動くこと自体が目的です。上の試験でも歩行はゆっくりした速度で行われました。

歩数の目標と組み合わせる

座位を細かく断つことと、1日の総歩数を確保することは、別々の課題です。両方を並べて考える必要があります。

歩数については、米国の40歳以上4,840人を加速度計で測定した研究があり、1日8,000歩の群は4,000歩の群に比べて全死亡リスクが51%低いと報告されています(Saint-Maurice PF et al. JAMA. 2020;323(12):1151-1160)。

日本の公的な目安もあります。厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』(2024年1月公表)は、高齢者について3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上(約6,000歩相当)としています。同ガイドはこの改定で「座位行動」の概念を新たに取り入れ、座りっぱなしを避けることを成人・高齢者に共通の基本として明記しました。

つまり公的指針も、「歩数を稼ぐ」だけでなく「座り続けない」を並べて求めるようになったわけです。

なお、心疾患や関節の病気で治療中の方、めまいや起立時のふらつきがある方は、休憩の頻度や歩行の強度についてかかりつけ医にご相談ください。立ち上がる回数を増やすこと自体が負担になる場合があります。

今日ひとつだけ

あなたが今日いちばん長く座るのは、どの時間帯でしょうか。まずそこにだけタイマーを置いてみてください。

私の経験では、習慣は「全部変える」と決めた日には根づかず、「ひとつだけ」と決めた日に根づきます。

次回は木曜日、道具・テクノロジーのテーマでお届けします。

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参考文献

  • Gao W, Sanna M, Chen Y, Tsai M, Wen C. Occupational Sitting Time, Leisure Physical Activity, and All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality. JAMA Network Open. 2024;7(1):e2350680.
  • Duran AT, Friel CP, Serafini MA, Ensari I, Cheung YK, Diaz KM. Breaking Up Prolonged Sitting to Improve Cardiometabolic Risk: Dose-Response Analysis of a Randomized Crossover Trial. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2023;55(5):847-855.
  • Saint-Maurice PF, Troiano RP, Bassett DR, et al. Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. JAMA. 2020;323(12):1151-1160.
  • Deaths potentially averted by small changes in physical activity and sedentary time: an individual participant data meta-analysis of prospective cohort studies. The Lancet. 2025. doi:10.1016/S0140-6736(25)02219-6.
  • 厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』(2024年1月公表)

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断や治療の助言ではありません。持病のある方、服薬中の方は、実践の前にかかりつけ医にご相談ください。

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

「110歳まで自分の足で歩く」を合言葉に、科学的根拠のある情報だけをお届けします。

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