大腸がん検診を過去1年に受けた人は、男性で50.9%、女性で46.2%です。厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』(2026年7月15日公表)の数字で、裏返せば男性の約半数、女性の5割強が受けていません。
受けない理由は人それぞれでしょう。ただ、この検査について、効果を数字で確かめた試験があります。
30年追跡したランダム化試験
米国ミネソタ州で1976年から行われた、便潜血検査の大規模ランダム化比較試験です。参加者は46,551人。毎年検査する群、2年に1回検査する群、検査しない群に分けられ、30年間追跡されました。
結果は、大腸がんによる死亡が毎年検査群で32%、2年に1回群で22%低いというものです(Shaukat A et al. N Engl J Med. 2013;369(12):1106-1114)。
ランダム化試験なので、「健康意識の高い人ほど検診を受ける」という逆因果の疑いは、ここでは当てはまりません。検診は元気な人が受けるから成績が良く見える、という批判は観察研究にはつきものですが、この試験はその弱点を避けています。
毎年と隔年の差にも目が行きます。10ポイントです。
日本の指針は「40歳以上、年1回」
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、大腸がん検診は40歳以上を対象に、便潜血検査を年1回行うことになっています。市町村の住民検診や職場の健診で受けられます。自治体によって自己負担額は異なるため、お住まいの市町村にご確認ください。
便潜血検査は、便を2日分採るだけです。
陽性と出たあとが本番
便潜血検査は、便に混じる微量の血を見つける検査です。陽性は「がんがある」という意味ではなく、「大腸の中を直接調べる必要がある」という意味です。痔やポリープでも陽性になります。
見落とされやすいのは、陽性のあとに精密検査(大腸内視鏡検査など)へ進まないケースです。検訸の効果は、検査から精密検査、必要な治療までが一本につながって初めて生まれます。上の試験で示された死亡率の低下も、陽性者が大腸内視鏡検査を受ける手順を含んだ成績です。便を採って提出しただけでは、仕組みの半分しか使っていません。
ほかの検診も並べてみる
同じ2025年調査では、過去1年の受診率は胃がん検診が男性48.8%・女性38.3%、肺がん検診が男性55.2%・女性49.5%でした。過去2年では、乳がん検診が51.0%、子宮頸がん検診が46.1%です。どの検診も、国の目標である60%には届いていません。
数字が語らない部分
上の試験は米国の研究で、対象は1970年代に集められた50〜80歳の人たちです。検査方式も当時の化学法で、現在日本の検訸で使う免疫法とは異なります。日本人の現在の高齢者にそのまま当てはまるとは言い切れません。また、検診には偽陽性(異常なしなのに要精密検査と出る)や、精密検査である大腸内視鏡検査に伴う偶発症の可能性もあります。
年齢の上限についても、一律の線は引けません。80代、90代で何歳まで続けるかは、持病、体力、検査を受けた場合に治療を受ける意思によって変わります。一律の正解がない以上、個別に決めるしかありません。続けるかどうか、内視鏡を受けるかどうかは、かかりつけ医にご相談ください。
便に血が混じる、便が細くなった、下痢と便秘を繰り返すといった症状が凴ているときは、検診を待たず、早めに医療機関を受診してください。検診は症状のない人のための仕組みです。
残り半数に入らないために
国の第4期がん対策推進基本計画は、がん検診受診率の目標を60%としています。数字で見ると、日本はまだそこに届いていません。
検診の通知は、封を開けないまま机に積まれやすい郵便物です。今年届いているなら、探してみてください。
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参考文献
- Shaukat A, Mongin SJ, Geisser MS, et al. Long-term mortality after screening for colorectal cancer. N Engl J Med. 2013;369(12):1106-1114.
- 厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』(2026年7月15日公表)
- 厚生労働省『がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針』
- 厚生労働省『第4期がん対策推進基本計画』(2023年3月)