シニアの新しい役割|科学が示す効果

私は72歳です。東京都と神奈川県で、10年間介護の現場に立ちました。デイサービスの管理者もしました。そこで何度も同じ場面を見ています。役割を失った方が、急に小さくなっていくのです。逆に、何か一つでも「自分の持ち場」がある方は、背筋が伸びていました。

これは私の印象にすぎません。しかし研究を調べると、印象を裏づける数字が並んでいました。今日はその話を書きます。

目次

役割を持つ人は、実際に長く生きている

まず、ボランティア活動です。55歳以上を対象にした研究のメタ解析があります。年齢や健康状態などを調整した後でも、ボランティアをしている人は全死亡リスクが24%低い、という結果でした(95%信頼区間 16〜31%)。Okun MA et al. Psychology and Aging. 2013;28(2):564-577 の報告です。

次に、人生の目的です。米国の50歳以上6,985人を追跡した研究があります。「人生に目的がある」という得点が最も低い群は、最も高い群に比べ、全死亡のハザード比が2.43でした(95%信頼区間 1.57〜3.75)。心臓・循環器系の死亡では2.66(同 1.62〜4.38)です。Alimujiang A et al. JAMA Network Open. 2019;2(5):e194270 に載っています。

認知症についても報告があります。人生の意味と目的の感覚が強い人は、認知症の発症リスクがハザード比0.76でした(95%信頼区間 0.72〜0.79)。Sutin AR et al. Archives of Gerontology and Geriatrics. 2023;105:104847 のメタ解析です。

反対側の数字もあります。社会的孤立、孤独感、独居は、いずれも死亡リスクを26〜32%高めていました。Holt-Lunstad J et al. Perspectives on Psychological Science. 2015;10(2):227-237 のメタ解析です。

これらはいずれも観察研究とそのメタ解析です。「役割を持てば長生きする」という因果関係が証明されたわけではありません。元気な人ほど役割を持ちやすい、という逆の向きもあり得ます。それでも、これだけ方向がそろっているのは重い事実だと私は受け止めています。

日本の70代は、すでに動き始めている

内閣府『令和7年版高齢社会白書』(2025年6月公表)によれば、2024年の65歳以上の就業者は930万人でした。2004年以降21年連続の増加で、過去最多です。就業率は25.7%となっています。

年齢2024年の就業率
65〜69歳53.6%
70〜74歳35.1%
75歳以上12.0%
65歳以上 全体25.7%
出典:内閣府『令和7年版高齢社会白書』(2025年6月)。いずれも過去最高。

70代前半で3人に1人以上が働いています。私が介護の現場にいた頃と比べても、風景は変わりました。ただし、役割は仕事だけではありません。給料の出ない役割にも、上に挙げた研究は当てはまります。

私が選んだ、給料の出ない役割

ここからは私の経験です。研究の話ではありません。

私は70歳を過ぎてから、ブログを書き始めました。介護現場で見てきたことを、文章にして残す役割です。読んでくださる方がいると、次を書く理由が生まれます。この「次がある」という感覚が、私にはいちばん効きました。

もう一つは、AI翻訳を使った海外への発信です。日本語で書いた記事を英語にして出す。それだけで読者の顔ぶれが変わります。日本の高齢者が積み上げてきた知恵は、世界から見れば貴重な資料です。私はそう思っています。

役割を探すときの、私なりの目安を並べておきます。

  • 週に1回以上、決まった曜日に発生すること
  • 自分がやらないと、誰かが少し困ること
  • 体力が落ちても続けられる形に変えられること
  • 相手からの「ありがとう」が届くこと
  • 10年後も名乗れる肩書きになること

5つ全部を満たす必要はありません。2つ当てはまれば十分だと私は考えています。

なお、新しく体を動かす役割を始めるときは注意が必要です。持病がある方、薬を飲んでいる方は、運動の強さや時間についてかかりつけ医にご相談ください。役割は続けてこそ意味があります。無理をして中断するのがいちばんもったいないのです。

あなたが明日から名乗れる役割は、何でしょうか。

参考文献

  • Okun MA, Yeung EW, Brown S. Volunteering by older adults and risk of mortality: a meta-analysis. Psychology and Aging. 2013;28(2):564-577.
  • Alimujiang A, Wiensch A, Boss J, et al. Association between life purpose and mortality among US adults older than 50 years. JAMA Network Open. 2019;2(5):e194270.
  • Sutin AR, Luchetti M, Aschwanden D, et al. Sense of meaning and purpose in life and risk of incident dementia: new data and meta-analysis. Archives of Gerontology and Geriatrics. 2023;105:104847.
  • Holt-Lunstad J, Smith TB, Baker M, Harris T, Stephenson D. Loneliness and social isolation as risk factors for mortality: a meta-analytic review. Perspectives on Psychological Science. 2015;10(2):227-237.
  • 内閣府『令和7年版高齢社会白書』(2025年6月)

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本記事は一般的な情報提供です。個別の症状や治療については、必ずかかりつけ医にご相談ください。

次回は月曜日、食事・栄養のテーマでお届けします。

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

「110歳まで自分の足で歩く」を合言葉に、科学的根拠のある情報だけをお届けします。

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