AIで健康相談|医師の代わりにはならない

私は72歳になった今も、パソコンやスマートフォンで生成AI、たとえばChatGPTやClaudeを毎日のように使っています。読者の方から「健康のことをAIに聞いてもよいのですか」と尋ねられることが増えました。今日はこの道具との付き合い方を、根拠を示しながら整理します。

まず前提として、高齢世代もすでにネットとつながっています。総務省の令和5年通信利用動向調査(2024年6月公表)では、国民全体のインターネット利用率は84.9%、60歳から69歳でも84.4%に達しました。道具はもう手の中にあります。問題は使い方です。

目次

AIはどこまで正確なのか

正直にお伝えします。AIの医療的な回答は、まだ医師には及びません。25種類の大規模言語モデルを比較したメタ解析では、AIの診断能力は相当高いものの、臨床の専門家の水準には届かないと結論づけられています(Takita H, et al. JMIR Medical Informatics. 2025;13:e64963)。

評価そのものにも穴があります。医療でのAI利用を調べた系統的レビューでは、対象519本の研究のうち、実際の患者データで検証したものはわずか5%でした(Bedi S, et al. JAMA. 2025;333(4):319-328)。多くは試験問題を解かせた結果にすぎません。つまり「試験で高得点」と「あなたの診察」は別物なのです。

一方で、画像を読む専門分野では実力が出ています。皮膚がんの画像診断でAIが皮膚科医と同等の精度を示した研究(Esteva A, et al. Nature. 2017;542:115-118)や、大腸内視鏡にAIを併用して腺腫の検出率が高まった臨床試験(Repici A, et al. NEJM. 2020)があります。ただしこれらは医師が使う専門の道具の話で、私たちが家で使うチャットとは役割が違います。

使ってよい場面、避ける場面

私は場面を分けて使っています。下の表が私の線引きです。

使ってよい場面 AIだけに頼らない場面
専門用語や検査値の意味を調べる 症状から病名を決める
医師に聞くことを整理する 薬の量や飲み合わせを決める
食事や運動の一般的な工夫を知る 治療をやめる、変える判断
読みにくい書類の要約 緊急の痛みや息苦しさへの対応

右の列は、必ずかかりつけ医にご相談ください。AIは診察も検査もしていません。あなたの体を診ているのは医師だけです。

私の賢い使い方3か条

10年の介護現場で、私は「分からないまま不安を抱える」ことの重さを見てきました。AIはその不安を言葉にする助けになります。私が実践している使い方はこの3つです。

  • 下調べに使う:受診前に、聞きたいことをAIで整理します。診察時間を無駄にしません。
  • 翻訳者として使う:難しい医療用語をやさしい言葉に直してもらいます。理解が納得につながります。
  • 最終判断はしない:AIの答えは仮説です。決めるのは医師と私自身です。

使う前のチェックリストもお示しします。

  • □ 個人が特定される情報(氏名、保険証番号など)は入力しない
  • □ 「絶対」「必ず治る」という断定は疑う
  • □ 出どころが示されない数字は鵜呑みにしない
  • □ 迷ったら受診する。AIは受診の代わりではない

私はAIを、物知りだが診察はできない話し相手だと思っています。頼りきるのではなく、医師との対話を豊かにする下調べの道具として使う。これが70代の私の距離感です。あなたなら、この道具に何を最初に尋ねてみたいですか。

シニア世代のスマホやAI活用をやさしく解説した書籍もあります。関心のある方はこちらから探せます。シニア向けAI・スマホ活用本を見る(Amazon)

参考文献

Takita H, et al. Comparing Diagnostic Accuracy of Clinical Professionals and Large Language Models: Systematic Review and Meta-Analysis. JMIR Medical Informatics. 2025;13:e64963.
Bedi S, Liu Y, Orr-Ewing L, et al. Testing and Evaluation of Health Care Applications of Large Language Models: A Systematic Review. JAMA. 2025;333(4):319-328.
Esteva A, et al. Dermatologist-level classification of skin cancer with deep neural networks. Nature. 2017;542:115-118.
Repici A, et al. Efficacy of Real-Time Computer-Aided Detection of Colorectal Neoplasia in a Randomized Trial. NEJM. 2020.
総務省『令和5年通信利用動向調査』(2024年6月公表).

本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断や治療の助言ではありません。症状や治療については必ずかかりつけ医にご相談ください。

次回は月曜日、食事・栄養のテーマでお届けします。

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この記事を書いた人

hasejiiのアバター hasejii 110歳健康寿命プロジェクト 運営者|介護福祉士|デイサービス管理者(経験10年)

介護福祉士として、デイサービスの管理者を10年間経験。現場で見てきた「健康に老いるための工夫」と最新の医学・栄養学の知見をかけ合わせ、世界第1位の平均寿命を誇る日本の食事・運動・睡眠・心の習慣を、優しい言葉で紐解いていきます。

「110歳まで自分の足で歩く」を合言葉に、科学的根拠のある情報だけをお届けします。

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